「いびきはよくあること」「子どもの寝息だから大丈夫」と思っていても、その背景に睡眠時無呼吸症候群(SAS)が隠れていることがあります。睡眠中に呼吸が浅くなったり止まったりすると、体も脳も十分に休むことができません。大人では日中の強い眠気や生活習慣病のリスク、子どもでは集中力の低下、学習面への影響、成長や顎の発達への影響につながることもあります。
当院では、耳鼻科診療と睡眠医療の両面から、大人と子どもの睡眠の悩みに向き合っています。鼻、のど、顎の形、生活習慣、睡眠の質までを丁寧に見ながら、その方に合った検査や治療につなげることを大切にしています。
睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に空気の通り道である上気道が狭くなり、呼吸が浅くなったり、一時的に止まったりする病気です。呼吸が乱れるたびに体は酸素不足になり、眠りも細かく中断されます。本人は眠っているつもりでも、実際には深く休めていないため、朝起きても疲れが残る、日中に強い眠気が出る、集中しにくいといった症状につながります。
大人の場合、肥満だけが原因と思われがちですが、実際には上下の顎の大きさや位置、鼻やのどの形、加齢による筋肉のゆるみ、飲酒や睡眠薬の影響など、さまざまな要因が関わります。特に日本人を含むアジア人では、顔面骨の特徴から、肥満のない睡眠時無呼吸症候群が多くみられます。
睡眠時無呼吸症候群は大人の病気という印象がありますが、子どもにも起こります。子どもの場合は、アデノイドや扁桃の肥大、鼻づまり、鼻炎、顎や歯並びなどが関係することが多くあります。大人ほど大きないびきが出ないこともあり、ご家族が気づかないまま過ごしていることも少なくありません。
お子さんの口がいつも開いている、寝ているときに「くーくー」という寝息が聞こえる、寝相が大きく乱れる、朝なかなか起きられない、日中にぼんやりしている、落ち着きがない、学習への集中が続きにくい。こうした様子は、性格や生活リズムだけの問題ではなく、睡眠の質が関係している場合があります。
子どもの時期は、体だけでなく、顎や顔の骨格も成長していきます。この時期に鼻呼吸がしづらく、口呼吸が続くと、顎の発達や歯並びに影響し、将来の睡眠時無呼吸症候群のリスクにつながることがあります。だからこそ、いびきがあるかどうかだけでなく、鼻で楽に呼吸できているか、眠りの質が保たれているかを見ることが大切です。
子どもの睡眠が整うことは、単に夜よく眠れるということにとどまりません。脳を休め、記憶を整理し、日中の集中力や活動性を支える土台になります。成長期の睡眠を丁寧に見守ることは、今の生活を楽にするだけでなく、将来の健康を守ることにもつながります。
診療ではまず、眠り方、生活リズム、日中の眠気、服用している薬、鼻やのどの状態などを詳しく確認します。必要に応じて、自宅で行う簡易検査や、入院して行う終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)を行います。PSGでは、脳波、呼吸、体の動き、酸素の状態などを一晩かけて調べ、睡眠中に何が起きているのかを詳しく把握します。
小児の場合は、ご家庭で撮影していただいた睡眠中の動画が大切な手がかりになることもあります。数値だけでなく、寝姿や呼吸の音、苦しそうな様子がないかなどを合わせて確認し、総合的に判断します。当院では、睡眠検査の設備を整え、患者さん一人ひとりの状態を丁寧に見ながら診断につなげています。
大人の睡眠時無呼吸症候群では、重症度が高い場合にCPAP療法を行うことがあります。比較的軽い場合には、歯科用マウスピースが適していることもあります。鼻づまりや扁桃肥大、顎の形が関係している場合には、薬による治療、手術、歯科や専門医療機関との連携など、複数の選択肢を検討します。
子どもの場合も、重症度や症状に応じて治療方針を考えます。アデノイドや扁桃が大きい場合には手術が選択肢になることがありますし、鼻の病気があればその治療を行います。歯並びや顎の発達が関係していると考えられる場合には、連携する歯科や矯正の専門施設につなげることもあります。
睡眠の問題は、本人が気づきにくく、周囲からも見過ごされやすいものです。「いびきが気になる」「朝起きられない」「日中に眠い」「子どもの集中力が続かない」など、日常の中の小さな違和感が、受診のきっかけになります。早めに相談することで、原因が見え、生活が楽になることもあります。
同院では、短期的な症状だけを見るのではなく、患者さんのこれからの生活や成長も見据えた診療を心がけています。睡眠医療の専門性と耳鼻科としての視点を生かし、必要な検査を行い、無理のない治療方法を一緒に考えていく姿勢が特徴です。
大人にとっても、子どもにとっても、睡眠は毎日の元気を支える大切な時間です。いびきや寝息、朝の起きづらさ、日中の眠気などが気になるときは、「様子を見ていれば大丈夫」と決めつけず、一度専門的な視点で確認してみることが安心につながります。眠りを整えることは、今の体調を整えるだけでなく、これからの健康を守ることでもあります。